抗癌剤(2)
抗癌剤は百数十種類はあるらしい。
それならピタッと効くものがあってもよさそうだが、先回にも書いたように、抗癌剤は『癌を治す薬』ではなく、癌細胞を攻撃する薬である。
『どのくらい効いたか』という観点から『効果あり』『効果なし』と判断する薬である。
ところが、癌というのは同じ癌でも、人それぞれ個性があって、あなたによく効いたから私にも他の人にも同じように効くとは限らないそうである。
癌がその人本人の細胞からできることを考えると、個性があるという医師の共通した感想はうなづける。
ということは、人によって抗癌剤の効き方が異なるということである。
また癌の種類は多く、抗癌剤がとてもよく効く癌、たいして効果があがらない癌、使っても使わなくてもあんまり差がない癌、まったく効果なしという癌もある。
効果という点から類別すると、おおよそ次のようになる。
抗癌剤の効果
1.抗癌剤で生存率が著しく高くなった癌
急性白血病 悪性リンパ腫 睾丸腫瘍
子宮せん毛腫瘍 小児癌2.抗癌剤で生存率が向上するが
第1のグループほどではないあきらかに臓器への転移がない乳癌
再発した第1グループの癌3.生存率は多少あがるかも知れないが
1年以上は抗癌剤不使用と大差ない進行した卵巣癌(III,IV期)
小細胞型の肺癌 臓器転移がある乳癌4.抗癌剤が効かない癌
残りすべての癌
上の表を眺めると、抗癌剤はさほど役に立たないのでは、と思ってしまいそうだ。
しかし、癌の治療は次の三つをいろいろ組み合わせて行うのが普通。
・外科的治療(手術)
・化学療法(抗癌剤)
・放射線療法(コバルトや重量視線などを照射)ごく早期の癌で、タイプがおとなしいものの場合は、手術だけですむこともある。
大腸癌になった友人がいたが、彼女の場合は、内視鏡検査で偶然見つかり、切除しただけだった。
処方された薬は消化剤や便秘薬だけで、ご主人に「本当に癌だったのかい」からかわれたとか。
私の場合も、5FUの錠剤を服用するように言われたが、ひどい胃潰瘍ができて二ヶ月でストップしたから、手術だけという範疇に入れてもいいだろう。
欧米では放射線療法がよく使われる。そして日本は切りすぎるという欧米側の意見もある。
しかし、手術が不可能な癌もある。放射線療法と抗癌剤を組み合わせる治療である。
私の叔父は鼻の奥に癌ができたが、場所は手術不可能なところだった。
でも、叔父には放射線が相当きつかったらしい。
「青菜に塩じゃなくて、青菜に熱湯かけたみたいだったわ」
叔母はそう言ったが、冗談でも言わないとやりきれなかったのかもしれない。
手術だけですんだ場合、微細な癌細胞まで完全に取れたかどうかは、医師にだって分からない。いつどこで浮上するか予測不可能である。
多分、体力が落ちて免疫力がぐーっと下がれば癌細胞は勢いづいてどんどん増えるのだろう。
だから、三ヶ月に一度、半年に一度、一年に一度と頻繁で長期間にわたる追跡が必要なのだ。
定期的に検査を受けていれば、早い段階で変化が見つかり、すぐ治療にとりかかれる。
とはいっても、癌という病気は一筋縄ではいかない。どの治療法も早期が一番効果があがる。再発、転移の場合、期待するほど効果が出ないようだ。
また、初めて癌が見つかった場合でも、癌のステージが高ければ高いほど(早期ではない場合)また癌細胞のグレードが高い(タチがよくない)ほど、単一の治療ではうまくいかない。
「早期発見、早期治療」をしても癌とともに生きることになるのは、そういう実態があるからだろう。
抗癌剤の選び方、組み合わせ方は専門知識と経験が必要である。
抗癌剤の専門医制度がようやくでき、また薬の認可数も増えた。今後の進展に期待したい。
しかし、自分の躰のことをよく注意するのが第一。
日常生活に気を配り、定期的な健康診断の結果を見過ごさないようにする。こういう基本的なことをまず実行することだろう。
07/04/15
続く→
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