・悠々自適
関東も梅雨入りしたわ。昨日は夏みたいに暑かったけど風が吹いて気持ちがよかった。そっちはどう？
むし暑か。
長崎のじとーッと暑い梅雨。いざ夏になると、もっと蒸し暑くなる。思い出すなぁ。
そう言いなさんな。ますます暑くなるやかね。
ウフフ。東京に来たときは、乾燥してて夏が楽だと感じたけど、近頃じゃヒートアイランド現象で暑い。私が住んでる所は郊外だからちょっとましかな。
去年の夏、あんたのところに行ったときは暑かったよ。
2004年の夏は特別だったのよ。あんたがちょうどマンションに着いたとき、救急車が来てたっけ。
熱中症の年寄りだろうか、なんて心配したっけ。
あのときのご近所さん、亡くなってはいないよ。寝たきりになってないといいけどね。
今年の夏はどうなるやら。ばってん、いつも言うとるけど、あんたみたいに悠々自適になりたかァ。
羨ましいでしょ。だけど、無収入状態を楽しむってことは誰にでもできるもんではありませんよ。
わかっとるさ。あんたやけん、できると。
フフフ。さすが、私のことわかってるじゃない。
もし、あんたが今の生活を楽しんでいないなら、早く仕事ば探せってせっつくさ。
仕事を辞めてからもう３年近く経つけど、今の生活を楽しんでいると自覚できるま、結構時間はかかってるのよ。
ふーん。
失業保険をもらっている間は毎月お金が入るからサラリーマン時代と同じ感覚。職探しも一応する。気分爽快ってわけにはいかない。本当に収入がなくなって初めて吹っ切れる。不安を通りこし、考え方が変るのよ。
なるほど。あんたの場合は失業保険を１年間もらって、それからさらに子会社時代の退職金を分割でもらってたけん、約２年間で少しづつ考え方をシフトさせて来たんだ。
仕事を辞めたときから、そのことは予想してたわ。だって、二十年以上もサラリーマンをしてたんだもの、生活パターンを変えるには時間がかかるのは当たり前よ。
思い出したけど、勤めていた最後の頃はサラリー半額だったろ？
うん。大変だったけど、いい準備期間だった気がする。ひと月の最低生活費の目安をつけられたからね。で、現在は『起きて半畳、寝て一畳』を楽しんでいるの。
アハハ。私がよう言う言葉たい。
私、エライでしょ。アンタは俚諺を知っているだけ。私は実行してるんだもん。
そげん自慢せんだっちゃよか。ばってん、イヤな思いをして働かんでんよかとは羨ましか。自由のあるもん。
エッヘン。でもね、今の暮らしを楽しめるのは、癌を経験したからかもしれない。早期癌だったからあんまり心配しなかったけど、オペのとき予期せぬ事態で死んでいたかもしれないじゃない。無事生還したから、おまけの人生を歩んでいると考えているフシがあるの。だから、余裕があるのかなあ。
これまであんたは言わんやったばってん、私には解っとったさ。
さすがぁ。
それに、あんたには住むところもあるし、まったくお金がないわけではないし。。。
そのあたりは計算してるわよ。雇われて働かなくてもお金を得る方法はあるのよ。私は組織向きの人間じゃないから、もうこのへんで方向転換しなくちゃね。老後もすぐだしさ。
私だってあんた同様、差別されてきたさ。医者だから、技術を持っとるからやっていけると。あんたもお嬢さん育ちでなくて、何か技術を手にしてたら、リストラでもあそこまでひどい扱いは受けんやったさ。
でもさあ、もし私が平成生まれだったら、きっと『いじめ』にあって『引きこもり』にさせられていたと思うわ。
いじめられて黙っておるほど、ヤワではなかろうが。
でも、会社では同年代の男たちにずいぶん意地悪されたなあ。もう少し美人だったら違っていたかもねえ。でも、私は媚を売る術など知らない。
そげん小細工はせんでよかと。私もできん。ただ、あんたが言うことに一理はある。
ウフフ。女の売りものにするには、私もあんたも真面目なのよ。
色気ムンムンのあんたなんか想像もできん。
いやあね。これでも私のことが好きだという男の人は過去に複数いたのよ。
今は？
今は色気関連での男に興味なし！
私も右に同じ。ああ、バカバカしい会話になってしまった。
じゃあ、このへんでおやすみ！
そんじゃあね。