安 心
ご報告しまーす。
なんね。いいこと？
そう。あんたに相談した胸の痛みのことよ。
ええっと。なんやったかね。
ホラ、左胸の上の方を針で刺されたみたいに、キーンと痛むことがあって、心配だってあんたに相談したじゃないの。
ああ、思い出した。ばってん、あんた、それ、ずいぶん前のことやかね。なんばしとったと。
痛みがあったのは去年の暮れ。でも、一度だけで、心臓が悪いんじゃないかと気になったのは年が明けてから。あんたに電話したのはそのあとで、もう２月になってた。
思いだした。まず心電図ば取れってアドバイスしたっけ。その結果が出たと？
そう。結論からいうと、心配なし。
そら、よかった。
調べるのが遅くなった理由は二つ。近所の循環器専門病院に診てもらえるか電話で聞いたら、「紹介状がないとダメ」だとさ。断られたの。
へえ。そりゃまたお高くとまっとるねえ。私やったら、ご近所のよしみで診るばってんねえ。
そこはベッド数１９で、24時間対応だから、物理的に心臓疾患とわかっている患者しか扱えないのが実情かもね。
そいばってん、なーんか不親切やね。
わが家から歩いて数分の所だけど、絶対にあそこにはかからない！
で、いつもの病院で診てもらったと？
そう。消化器外科の先生に相談したら、すぐ心電図を取れるようにしてくれたわ。そして循環器の先生から結果を聞くようにって。
で、何だって？
ピンポイントの鋭い痛みは、まず心臓とは関係ない。神経の痛みだとさ。つまり、肋間神経痛。
神経が骨や筋肉の間にはさまれて刺激されておこる一時的なもの。ま、重大な結果でなくてよかった、よかった。
あのね、循環器のドクターって私たちとあんまり歳が違わない感じだったわ。そのせいか、内科系の人のせいか当たりが柔らかだった。こっちも何だかほっとした気分になれたわ。
ふうん。
もしかしたら、患者をトータルに診るということが身についているから、こちらもそれを感じたのかねえ。
確かに私らの世代までの内科医は、そういう教育を受けてきとる。ばってん、人によりけりだろうし、若い医者はどうだかね。
それとね、説明が実に解りやすいの。
そらよかったね。
「ピンポイント」という言葉が、私の感じた痛みをピタリと言い当てていたわ。だから、たちまち疑問解明。それとねえ……。
なんね。あんたの好みのタイプやったとね？
そんなんじゃないわよ。
冗談、冗談。
安心したもんだから、近所の専門病院で断られたことも話したの。そしたら、ここへ来たのは正解ですってさ。
理由も言うてくれたやろ。そういう医者なら。
そんな所に行くと、必要もない検査をいっぱい受けさせられたでしょうね、って。
お金も時間もかかる。あげく、「何でもありません」。「肋間神経痛」ということは言うてくれんかも知れんね。
そうだわね。素人のバアサンには「大丈夫です」とか「何でもありません」ってやさーしく言っとけばいいと思いこんでる医者もいるようだからね。
まあ、そいでん、あんたの心臓は無事でよかった。よかった。
じゃあ、またね。
07/04/20